「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」(額田王、巻1・20) 紫草が茂る標野で自分に向かって手を振る男性がいる。野の番人が見とがめないかと心配している。東近江市蒲生野の万葉公園は、天智天皇が即位した年の五月五日、狩りが行われた場所です。5月5日は太陽暦でいうと6月22日。この時期、紫草が一面に可愛い花を咲かせていたのでしょう。天智天皇の妃の額田王に袖を振る男性は元夫の大海人皇子。袖を振ることは愛情表現。夫の天智天皇の横で手を振る大海皇子。額田王にとっては気が気ではなかったでしょうね。白い小さな花を咲かす紫草、今では絶滅危惧種に指定されるほど希少な花となっています。
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ひなまつり (木曜日, 02 7月 2020 23:21)
当時の情景が想像できる美しい絵ですね。はるばるの撮影ありがとうございます。
歌中において、時の最高権力者は天智天皇。その傍らで交わされる一見スリリングな恋のやり取りのに思えます。しかし一方では、優しい夕空の下、どこかゆるやかでユーモアすら感じさせられます。古代はおおらかな恋愛がされていたのではないでしょうか。